高裁控訴状・被控訴人主張の留意点

d 被控訴人主張の留意点
体幹障害に関する被控訴人主張の変化
 何故,控訴人5級主張が,被控訴人の4級主張より高い要求という,有り得ない誤認が起きたのかは,被控訴人の主張方にある。
 被控訴人準備書面1と同2,陳述書を比較すると,主張内容が明らかに変わっている項目が多数あるが,体幹障害に絞ると,

初,「上下肢障害7級(単なる自覚症状を好意的7級表記)・体幹障害無し・後遺障害無し」
1,「上肢障害7級・下肢障害4級・体幹障害無し・脊髄損傷治癒・後遺障害有り」
2,「上肢障害7級・下肢障害4級・体幹障害無し・脊髄損傷症状固定・後遺障害有り」
陳,「上肢障害7級・下肢障害4級・5級未満の体幹障害は有り・後遺障害有り」
 被控訴人は,控訴人F妻の入院中,後遺障害はないものと診断認識し,大腿骨折リハのみ施療して来た。
 控訴人の指摘で下肢4級に訂正はしたが、控訴人から「脊髄損傷は体幹障害で,治癒例は無い。」と指摘されるまでは,「脊髄損傷治癒」を主張して来た。
 誤りに気付いた後は,「治癒という表現は治ったという事ではなく,症状固定の用語。」と説明したが,控訴人から「その医学用語は,寛解。治癒は治癒。」と指摘され,以後は説明無しに,5級までには至らない体幹障害は有ると陳述した。
 控訴人は,一貫して陳述まで「下肢4級は誤り,体幹5級が正しい」と主張して来たが,原判決は被控訴人の「陳述」を採用した。

e 保険給付妨害の開始時期
 第2診断書の診断協議中,控訴人が険悪ではなかった状況を説明するため,控訴人が「事を荒立てる気はない」と発言した事について,被控訴人は準備書面1で否認しなかった。
 その間の状況は既述済だが,被控訴人は準備書面1で「協議中に胸部変形回答を止めた」事実を認めていた。

 保険給付妨害が初期決裂原因であるのに,被控訴人が「準備書面1で真摯な反省と謝罪を述べ,陳述書で志田副院長が「原因はこちらに非があるので,他の関係者も含め本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。」「何度も何度も謝った。」とウソを述べたら,被控訴人の再計測提案が誠実と評価され保険給付妨害は消失,逆に妨害に憤慨した控訴人らに非があると認定される。


f 相互の費用負担メリット
 調停や訴訟には,費用が掛かる。
 費用を掛けたメリットは何かを検討すると,控訴人が第2診断書の下肢4級を,再計測を虚偽して,等級を下げるよう求めたのは,下肢4級届けが犯罪になるからである。
 一方,被控訴人は患者の身障者等級が何級に認定されようと全くメリットは無い。
 それなのに,不正診断書が判明した直後から,控訴人に一方的な嫌がらせを始め,弁護士を依頼しながら調停を決裂させたり,訴訟に応じた目的は何か。

 それは,控訴人F妻の体幹障害と「おまかせリハ」の隠蔽である。
 ミスなら誰にでもある事だが,被控訴人には,それがおまかせリハという組織的な違法行為により発生した問題という自覚があったから,体幹障害を認め謝罪するより,まず控訴人らの抹殺を選んだのである。


g 平成24年11月原審中の被控訴人譲歩提案
 本来の争点とは無関係の問題であったので,控訴人らは原審においてこれを拒否した。
 しかし,原審裁判官は,これを被控訴人の謝罪反省意思表示と捉え,控訴人非難の要素とした可能性があるので,以下言及する。
 被控訴人は,「真摯な反省と謝罪」を述べ,誠実対応しているかを装い,「控訴人らが被控訴人を信頼出来ない事を認め,函館の他の病院で被控訴人らが受診した場合,診療情報提供書を同病院に送付する。」旨の主張をしている。

 しかし,原審において,控訴人らは,平成24年3月提携病院受診時に,紹介状の手紙が無ければ受診拒否された旨説明している。

 被控訴人が交付すべき紹介状は,他病院に直接送付する診療情報提供書と共に,患者本人が他病院に直接持参する手紙を要するのであって,先に手紙を控訴人F妻に交付しないのであれば,紹介拒否状況は変わらない。

 これは被控訴人による「紹介状・手紙交付拒否宣言」である。

 事実として,事故患者のみは紹介状が必要なのに,原審において,被控訴人は最後まで「応召義務があるのだから,紹介状が必要だとは聞いた事が無い。」旨,控訴人主張を否定し続けた。
 また本来,被控訴人が「控訴人らに不正確診断書を交付した事が発端」と原審で認めたのが本心なら,例え控訴人らが拒否しようと,「山梨病院に行く事自体,患者らの身体的負担が大きく,医師として勧められる事ではない。本院の責任であったのだから,定められていた筈の治療期間分,治療を再開し,今からでも間に合う保険請求があったのなら,直ちに正確な診断書を作成交付し,社会復帰を支援する。」と述べた筈である。

 「どうせ信用しないんだから,お前ら足を引き摺って,他の病院を勝手に探せ。受け入れ先が見付かったら,診療情報提供書を病院に送ってやる。他病院の受付に出さなきゃならない手紙は知らん。」
 この対応を,控訴人らは,譲歩と認める事が出来ない。

 尚,身障者診断書についても,交付日云々述べているのだが,これは平成24年3月の「福祉課の空欄診断書受理」の際と同様対応である。
 如何にも,誠実且つ几帳面対応のためかのように装うが,平成24年3月の時点で診断書記載日・交付日から半年以上が経過している。
 記載日については,道庁のご承諾を得ていたからといって,公務所に提出する書類の日付を「半年前でも良いか?」と確認して来る事自体が,「日付は変えないぞ」という意思表示であり,もともと診断書を提出する意思が無かった理由は,前述の通りである。
 従って,訂正記載すべき日付など,事務長であれば当然承知しているものを,「患者に聞く,福祉課に聞く」と主張した平成24年3月と同じ事を,原審でも述べただけである。

 後日の拒否理由として,被控訴人は「最新の計測を要する。」旨主張する予定だったと思われるが,道庁は,診断書項目が平成23年7月記録である事を了解の上,控訴人F妻が退院後に薬を止められている事を知っており「項目のレベルは悪化している」という医学的判断前提の上で,被控訴人の嫌がらせから救う為に,特例許可してくれたのである。

h 控訴人らの民事裁判意図
 調停申請の際,事務官の方が「病院が薬を出さないなら,他の病院に行けば? どこでも診てくれるよ。『事故の場合,紹介状が要る。』って,保険会社が出したくないから言ってるんじゃないの。」と言われたので,控訴人は「保険治療給付は終わっていたのに,『給付再開する』と言ってくれた保険会社で,控訴人自身も要紹介状を確認済み。」と説明後,受理して頂いた。
 第1回調停後,控訴人希望通りの申立事項変更の為に,時間外でアドヴァイスして下さった事務官に,「調停,大丈夫でしょうかね。」と伺ったら,「善し悪しは兎も角,法人に問題が起きたんだから,弁護士さんも付いてるし,次はチャンとやるでしょう。」の後に調停不成立である。

 民事提訴の際,応じて下さった事務官に「『薬を出してくれ,診断書を出してくれ』と請求出来るものですか?」と伺うと,「損害としてお金に換算する方が」と言うお話だったので,訴状の賠償請求となった。
 自分が被控訴人で,「自分が原因で相手に迷惑を掛け,真摯に反省謝罪する」意思があったのなら,訴状が届いた時点ですぐ相手に接触し,「保険会社対応が可能であれば相手の損害極小を図り,代理人にも薬が出せると説明し,訴状主張の30分程度で出来る診断書作成は,山梨に行かなくても責任を持って交付する。」と対応しただろう。

 調停で金銭要求した訳でも無く,違法行為を止めるよう訴えただけなのに,治療費給付だけでなく医療保障期間も終了し,給付されるべき保険も止められ,治療が再開出来ても自費負担を強いられ,山梨受け入れは未確定,全労済の最終診断書も2年経過で受理不明(本件請求には含まず)の状況で,被控訴人は,結審前の陳述でも,自己主張だけを繰り返した。

 平成23年10月から無視を始め,被控訴人の調停拒否まで5箇月,提訴までの7箇月,その後,開廷から8箇月掛けた裁判中も苦しみ続けて来た控訴人らに,「現状維持」判決である。

 以上の通り,原判決には根本的な事実認定の誤りがあり,これを前提にした各認定も事実誤認であるのだが,以下簡潔に記す。略