無資格医師による脊髄損傷患者にムチウチ治療の無診察リハビリテーション

 病院には、患者受け容れ直後から、重症の脊髄損傷患者を受け容れたという意識が全く無かった。
 病院は「脊髄損傷患者と正しく認識して治療していたので、FIM満点近くまで症状改善させた。」と主張しているのだが、リハビリ専任医であれば、リハビリで脊髄損傷を治癒させたなどと言う医学的に非常識な主張を出来る筈が無い。

 転入院直後、前病院の重症扱いの引継ぎを受けていた該病院は、入院当日から軽症扱いに変更した。
 歩行器使用、ポリネック使用、入浴介助、院内移動介助など、全てが無くなった。
裁判中、病院に「重症と認識していたなら、この軽症扱いの変更理由は何か。」と問い質しても、説明・反論は無かった。

 患者入院当日から、医師も療法士も看護師も、軽症のむち打ち患者と思い込んでおり、医師は、レントゲンを診て、脊椎損傷と誤認し「もう治ってるね」と発言した。
、脊椎の骨はレントゲンで診断出来るが、中枢神経の脊髄損傷は、MRIでしか診断出来ない。
 療法士も、「脊椎手術をしないで済んで良かった。」と発言しており、軽度のムチウチと誤認していた事は明らかであった。
 疾患別に保険診療期間上限が定められているが、脊髄損傷患者は180日間であるにも関わらず、病院はF妻の治療期間について、脊椎損傷患者対象の150日間と説明し、ムチウチと誤認していたのは明らかであった。
 退院後、最初交付した上下肢7級の誤診断書の診断説明に際し、医師は「(ムチウチの)自覚症状は、後遺障害とは認められない。」と説明し、患者が「MRI診断された脊髄損傷は後遺障害等級9級以内が確定する疾患」と主張すると、医師は「後遺障害等級は関係が無い。体幹障害ではMRI診断された脊髄損傷であっても、後遺障害等級14級にも該当しない単なる自覚症状だから、後遺障害は無い。」と、リハビリ専任医の常識に反する発言をしていた。

 その後、上肢7級下肢4級体幹障害無しの訂正診断書を提示し、患者から記載内容の矛楯を指摘された以降、病院は脊髄損傷治癒診断が誤りであった事に気付いたのだが、裁判官が病院に有利な判決をするという心証を得て、リハビリ専任医であれば、常識外れの脊髄損傷治癒を主張し続けたのである。

 「脊髄損傷をリハビリで治癒させた。」、この主張だけをみても、医師がリハビリ専任医の資格が無い、知識も経験も無い名目上にリハビリ医による、無診察リハビリテーションであった事は明らかである。


事件の要約・目次