脊髄損傷治癒の病院オマケ主張根拠

 病院は「機能的自立度評価のFIM数値を満点近くまで症状改善させた」事を、脊髄損傷治癒の証拠に挙げ、患者はより軽症の夫の方がFIM評価数値が5Pt以上低いなど、評価基準が経験の浅い療法士の恣意的判断によるもので信頼性が低い点を指摘し、同じ満点近くまで症状改善したFIM数値は下肢障害も対象にしているので、満点近くまで症状改善しながら下肢4級を診断している点に矛楯があり、証拠にならない点を指摘した。
 先ず第一に、FIM数値は患者の自立状況判定の参考数値であって、脊髄損傷治癒診断の根拠になるものではない。
 事実として、この満点近くまで症状改善したFIM数値は、当初交付された上下肢7級体幹障害無し診断書の記載根拠にしたもので、破棄撤回された軽症診断書記載の参考にされたものであった。
 この旨、患者が説明した際、裁判官も納得し、病院弁護士もこの指摘を聞いた際、「バレたか」という顔をしていたのに、判決では病院主張の治癒証拠としてそのまま認定された。
 
 これに加えて、病院が治癒根拠に挙げた補足証拠があった。
 それは、患者の外出数である。
 病棟では軽症扱いのため、同室患者から雑用を頼まれることが多く、病院から自宅までは100m程しかないので、帰宅して自宅で休んでいた方が安静にしていられた。
 また、店舗経営の帳簿を仕上げて確定申告をしなければならなという、止むを得ない理由もあった。
 これについて、病院は「患者が、入院中54回も外出していたのが治癒の証拠」と主張した。
 
 これに対して、患者は「病室より安静にしていられた事実と共に、患者の外出希望数ではなく、医師の外出許可判断の根拠を重視すべきである旨主張した。
 前病院では、転退院直前、移動に備えて、患者は院内美容室の利用を希望した。
 しかし、これに対し、同病院のリハビリ専任医は、短時間の美容室利用も禁じた。
 一方、該病院は、入院中の軽症扱いに準じて、患者の外出希望を何の診察も無しに54回も許可し続けたという事である。
 外出許可をするという事は、医師が軽症扱いしていた通り、医師が脊髄損傷患者の治癒判断済みであったから外出を許可していたのであって、患者の外出希望の数を合計して治癒判断の証拠になるという主張は成立しない。
 多数の外出を許可していた医師の判断根拠こそ明らかにすれば良いのであって、それが脊髄損傷治癒主張の判断の証拠になるかもしれない。
 この点を裁判官にも主張したが、病院は患者の反論には応えず、ただ、「54回外出していた」とだけ、何度も繰り返した。
 この裁判では、患者の反論に病院が応えなくても、病院が同じ主張を繰り返せば、病院主張通りの判決になった。
 
 病院が、脊髄損傷治癒診断の医学的根拠として挙げたのは、患者のFIM数値と補足の外出希望数だけである。脊髄損傷治癒例を挙げた訳でも無く、判例を示した訳でも無く、他の医学的根拠は一切挙げていない。・・・真に呆れた裁判であった。