脊髄損傷に関する病院主張の変遷

 診断書の矛楯発覚時、病院は「脊髄損傷の後遺障害はない。」と、頸椎捻挫の自覚症状と誤認して症状説明していた。

 調停時は、調停員が医師であったために、脊髄損傷に後遺障害は無いという嘘も言えず、脊髄損傷の診断を曖昧にし、「後遺障害はない。」と、治癒を説明していた。

 裁判が始まり、患者が「脊髄損傷不治は医学常識で、治癒例は無い」と主張すると、病院は「治癒という用語は、症状固定の意味で使用し、後遺障害が無いという意味では無い。」と主張を変えた。
 患者が「症状固定の医学用語は寛解。治癒は治癒。」と主張した際、病院から反論は無かった。
 以後、病院は裁判終盤まで、「脊髄損傷は治癒し、後遺障害はない。」と主張し続けた。裁判官の反応を見て、病院弁護士が主張方針を決めたようである。

 最終陳述書で、初めて「診断書に記載するレベルでは無い脊髄損傷の後遺障害はあった。」と主張を変え、「脊髄損傷の後遺障害レベルは『体幹障害無し』のレベルであったが、その軽度の体幹障害と下肢障害と併合し下肢4級に申請した。」と陳述した。
 
 これに対し、患者は、F妻の脊髄損傷はMRI診断された頸髄損傷で、後遺障害等級9級以内が確定する高いレベルの後遺障害が遺る疾患であり、体幹障害5級以内も確定している疾患である。
 病院は、下肢に単独障害が無いのに、「体幹障害無し」診断レベルの軽度の体幹障害を併合して、下肢4級に申請したというが、厚労省の認定基準では、単独障害の無い下肢と体幹の併合申請は認められていない。
 自立歩行2kmの場合、下肢障害基準では7級相当であっても、体幹障害基準では5級に相当するもので、診断書に記載するほどでは無い軽度の体幹障害という概念は、脊髄損傷の場合存在しない旨、裁判官には数度主張済みだったが、判決は病院主張通り「脊髄損傷はリハビリで治癒した」という異常なものとなった。

 裁判が異常だった思う根拠の一つに、厚労省の障害認定基準通達に対する裁判所の評価がある。
 障害認定基準通達は、法律では無いから・・・と、医師の診断が優先するかのような評価をしていた。
 通常、医師は、診断書に意見記載する際は、障害認定基準通達に準拠して記載するものであり、この通達に違背する虚偽記載を故意に行えば、虚偽診断書作成の刑法犯である旨の患者指摘は、全く無効であった。