患者の脊髄損傷不治主張を裁判官が認めなかった病院の反論は?

 地裁裁判官は、患者の反論は一切認めず、病院主張のみ全て認定し、民事訴訟法上の自白の擬制は認められなかった。

 患者は、脊髄損傷不治は国際的な医学常識で、F妻の脊髄損傷はMRIにより診断確定している頸髄損傷であって、後遺障害無しまでリハビリで治癒させることが可能な疾患ではない旨何度も主張した。

 脊髄損傷不治は医学常識という患者主張に対し、病院の反論は不知であった(地裁準備書面1)。

 否認であれば、患者主張を認めないと言うことだが、不知の場合、単に知らないということではなく、認めないが立証されれば受け入れるという法律用語である。
 特にあの裁判官は自ら証拠確認はしない人だったので、脊髄損傷不治の医学常識証拠を患者が準備しなければならなかったのかもしれないが、脊髄損傷不治は一般社会常識ではなかったのだろうか。
 患者は法廷で脊髄損傷不治の根拠や、後遺障害等級判定に関する脊髄損傷の認定基準などを証拠として挙げていたが、証拠と認められなかった一方、病院は医学常識に基づく反論はせずに、虚偽のFIM満点近くまで症状改善した数値を挙げて脊髄損傷治癒診断の正当性を主張した。
 もし、これに患者が反論しなかったために、裁判官が病院の治癒主張を認めたというなら理解出来るが、病院主張のFIM数値がF夫より重症者のF妻の方が良いという矛楯する数値であった事、破棄撤回した軽症診断書の数値であった事、FIM数値で脊髄損傷治癒の証拠にするなら同じFIM数値の対象である下肢4級の重症診断根拠にしている矛楯がある事など、患者は具体的に裁判官に主張し、裁判官も「あっそうか」と発言していたのにも関わらず、結局判決では、FIM満点近くまで症状改善の病院主張が脊髄損傷治癒の証拠と認定されてしまった。
 脊髄損傷不治は、ネット検索でも数分で確認出来る一般常識である。それを、裁判官が知らなかったとは想定外だった。

 それ以上に留意されるべきは、脊髄損傷不治を病院が不知と回答していた事実である。
 脊髄損傷治療を担当する経験あるリハビリ医であると法廷で主張しているリハビリ専任医が、患者から脊髄損傷不治は世界的医学常識だと主張されて、不知と回答している事自体が、脊髄損傷という疾患を知らずに治療していたことの証明ではないか。
 脊髄損傷不治の医学常識について不知の医師が、脊髄損傷をリハビリで治癒させたと主張していることに、何故裁判官は疑問に思わなかったのだろうか? 裁判官の病院偏重には強い疑問を感じる。