無診察リハビリテーションの禁止

平成23年度医科集団指導用テキスト保険診療の理解のために
厚生労働省北海道厚生局北海道保健福祉部健康安全局発行
厚労省が医療関係者に講習会形式で行う集団指導:抜粋

(3) 保険診療の禁止事項
無診察治療等の禁止(療担第12条)
 医師が自ら診察を行わずに治療、投薬(処方せんの交付)、診断書の作成等を行うことは、保険診療の必要性について医師の判断が的確に行われているとはいえず、保険診療としては認められるものではない。
なお無診察治療については保険診療上不適切であるのみならず医師法違反(「医師は自ら診察しないで治療をしてはならない20に当たるものでありまた倫理的にも医療安全の観点からも極めて不適切な行為であることは言うまでもない

診療の一般的方針12 保険医の診療は一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して適確な診断をもととし患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない
療養及び指導の基本準則13 保険医は診療に当つては懇切丁寧を旨とし療養上必要な事項は理解し易いように指導しなければならない
指導14 保険医は診療にあたつては常に医学の立場を堅持して患者の心身の状態を観察し心理的な効果をも挙げることができるよう適切な指導をしなければならない
15 保険医は、患者に対し予防衛生及び環境衛生の思想のかん養に努め、適切な指導をしなければならない。


地方厚生局各県事務所による「個別指導」 等でリハビリ病院が指摘された事項
 集団指導は病院開業時の講習会のようなものですが、個別指導は特に問題のある企業に対して行われる行政指導をいいます。

健保診療におけるリハビリテーション医療のあり方
 最近、リハビリテーション医療の件数が増大するに伴い、漫然とした長期の医療行為を防ぐ意味で適正化の指導がなされている。それらの項目の一部を抜粋した。
 ①リハビリテーションを実施するにあたって、医師は、患者ごとの実施計画
  を作成し、訓練効果の評価を行う(下記 「注釈1」 参照)。
 ②医師は、全ての患者に対し、毎回リハビリテーション前に、必ず診察を行
  い、診療録に病理学的所見などの評価項目を記載すること(下記 「注釈2」
  参照)。
 ③無診察によるリハビリテーション実施は認められない。
 ④処方箋は、患者の病状、治療種目、治療メニュー、治療期間を、記録する
  こと(特に治療期間は明確にすること)。
 ⑤処方内容においても、例えば筋力増強訓練と記載するだけでなく、訓練箇
  所、訓練方法、訓練期間などを記載しなければならない。
 ⑥リハビリテーション施設基準における専任医師の役割(下記 「注釈3」 参照)
 ・リハビリテーション診察業務の徹底、当日分の全症例のリハビリテーション実施前診察をすること(下記 「注釈2」 参照)。
 ・専任医師は、リハビリテーション部門に常駐していることが望ましい。

注釈1(医師による定期的なリハビリテーション実施計画の作成等)
 医師は定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、リハビリテーション実施計画を作成する必要がある。また、リハビリテーションの開始時及びその後3か月に1回以上、患者に対して当該リハビリテーション実施計画の内容を説明し、診療録(Drカルテの2号用紙)にその要点を記載すること。【入院リハ患者ならびに外来リハ患者の全症例】。
注釈2(リハビリテーション診察・カルテ記載内容の例示)
 ・リハビリテーション施行患者の状態を、診察・評価し、リハビリテーション
  訓練(治療) が必要か、最適か、できる状態か、等を把握する。
 ・リハビリテーション施行患者を診察し、「その時の全身状態・健康状態・体
  調・バイタルサイン等(リハビリテーションを受けることができる状態であるという根拠・データ)」、「リハビリテーション治療効果判定[患者の障害像・生活機能 (移動歩行能力・ADL(FIM)能力・コミュニケーション能力等)による客観的効果判定]」、ならびに「現状として、リハビリテーション継続が必要である」ということを診療録 (Drカルテの2号用紙)に記載する。
(参考)リハビリテーション専任医師とは、主にリハビリテーション指示、リハビリテーション方針・リハビリテーション実施計画の策定に従事する医師であり、リハビリテーションを実施していない患者への診察業務と兼務も可能であるが、割合としてリハビリテーションへの関わりが多くなくてはいけない(リハビリテーション科へ配置されている医師が必要)。通常では、主治医からの依頼についてリハビリテーション専任医師が確認後に指示を出し、セラピストと共に方針や実施計画等を決定していく形が望ましい。