高裁控訴状・本質的な争点

c 本質的な争点
 本質的な争点は,原判決が完全に否定している原審中の平成24年8月に判明した「セラピストおまかせリハビリテーション」である。

 被控訴人に撹乱されて,控訴人らが「障害4級認定に不満でゴネている」と思えば,被控訴人主張だけを真実と認定してしまうのだろうが,先入観を捨て,控訴人主張の事件経緯を時系列に従って確認していけば,控訴人主張が事実である事と,事件の本質が判明する。

 本質的な争点に至る経緯
 平成23年10月の不正確な第1診断書・上下肢7級判明が事件の発端であるが,原判決は「判明直後に被控訴人が再計測を提案し,控訴人は応じなかった」と認定している。
 しかし,当初被控訴人は,脊髄損傷患者に「単なる自覚症状で後遺障害は無い」旨主張し続けたのであって,もし被控訴人から再計測即ち訂正の意思があるならば,それは問題解決の一歩であり,控訴人らは必ず応じていた。
 当時控訴人は,被控訴人相談員に控訴人妻の入院中の状況を説明して,何度も解決対応を促し,相談員も努力してくれている様子は窺えたが,病院としては「単なる自覚症状」主張を変更しなかった。
 事件判明から約10日後,突然に被控訴人窓口担当氏から「第2診断書を作成したので確認して欲しい」旨の電話があり,控訴人らは解決に動き出した事に安堵した。この時,控訴人らに「再計測項目がある」との説明はなく,控訴人らがこれを拒否した事実も無い。

 控訴人夫は,被控訴人病院で第2診断書を提示され,リハ専任医がいれば医師が行うべきであるにも関わらず、リハ科長から再計測項目を含む簡単な説明を受けた際も,問題解決するのだから再計測拒否はしていない。
 第2診断書を持ち帰り,控訴人らで検討し,翌日控訴人夫が病院でリハ科長と「体幹無しで下肢4級は矛盾しないか」など質疑応答した際も,再計測を拒否する必要は無いから,していない。
 今思えば,控訴人が「体幹無しで下肢4級は矛盾しないか」と確認した事が,被控訴人らによる攻撃の発端になった。

 その後,控訴人は,脊髄損傷治療記載に疑問を感じ始めたのは事実だが,診断書作成により問題は解決するのだから,再計測自体は拒否する理由が無かった。
 再計測項目は診断書の極一部であり,且つリハ対象重要項目だったといえ,僅か3項目であり,それもそのうちの可動域だけであったのだから,最重要項目の所見などと比べれば,等級認定とは関係の無い,全く瑣末な項目である。

 翌日,保険会社から「弁護士に依頼しているから,控訴人夫の胸部変形診断回答しない。」という被控訴人対応の内容を伝える電話があった。
 診断書修正協議は,実質1回で「障害無し7級」が「4級」に改善し,あとは細部を詰めるだけの状況で,突然控訴人妻の診断書問題とは無関係の,控訴人夫の保険金給付妨害を始めたのである。
 直ちに,被控訴人窓口担当氏に抗議電話した処,「勘違い」と答えるだけで,その後に再計測の話をされたが,まず保険給付妨害を止めるよう申し入れたので,再計測拒否としてはその時からである。

 被控訴人は,準備書面1・23頁で,協議中に事務長が保険給付妨害を始めた事を認めている。

 これについて,被控訴人は準備書面2で,保険会社の「弁護士依頼回答拒否」・窓口担当氏の「勘違い」回答を全て否定し,「控訴人夫の右膝障害問題が発覚したので,控訴人夫の利益を考えて一気解決を図る為に保留延期しただけ。保険会社から連絡するので被控訴人から控訴人に,延期理由は伝えてない。」と主張した。
 これに応えて,控訴人は「その後,病院提携医の的確な対応で入院中に再手術が決まり,保険関連問題は全く発生していない。また被控訴人から控訴人には説明しなかったというのだから,いきなり保険給付妨害された控訴人が,窓口担当氏に当然抗議した筈だが,同氏が「勘違い」と回答しなかったのなら,何と答えたのか。」と問い質したが,被控訴人は無視だった。
 その後,被控訴人は,説得力が低いと思ったのか,陳述書で「控訴人妻の問題も解決する目的の延期だった。」と主張し,原審裁判官は,控訴人主張のみ全面的に認定した。

 被控訴人が何を主張しようと,被控訴人が言う「被控訴人に非があるのだから,本当に申し訳ない気持ち」で始めた控訴人妻の第2診断書協議中に,控訴人に知らせもせず,一方的に控訴人夫の保険給付妨害を始めた事には,何の正当性・合理性も無い。
 協議は,控訴人妻の第2診断書のものであって,控訴人夫の後遺障害診断書・胸部変形問題とは全く関係が無く,当時,控訴人夫の右膝関節障害問題は存在しなかった。
 まして,被控訴人陳述書で「追加理由」と強弁したのは,控訴人妻の後遺障害診断書問題であって,当然,控訴人夫の後遺障害診断書・胸部変形問題とは全く関係が無い。

 控訴人の抗議に対し,被控訴人からは何の対応も無く,保険給付が妨害されたままなので,控訴人から電話をすると,保険給付妨害については進展が無いまま,被控訴人窓口担当氏から控訴人妻の第2診断書計測項目空欄部の「訪問計測」提案があった。
 「被控訴人側が,合理的な説明もなく保険給付妨害を開始継続しながら,控訴人に訪問計測に応じるよう求める。」のは,脅迫である。
 尚,後述するが,被控訴人が提示した空欄説明は虚偽で,被控訴人には記録がある事を確認していた。
 これを被控訴人は準備書面1で認めているが,実は記録が有りながら,控訴人に再計測脅迫してきた理由を以下に記す。

 この間の被控訴人対応を分析すると,控訴人らから第1診断書の誤りを指摘され,誤りが事実だったから安易に第2診断書を控訴人に提示したのだが,実質1回目の修正協議で,控訴人から「体幹障害無しで,下肢4級は矛盾しないか?」と指摘されて,被控訴人は,それが不法行為だった事に気付いた。
 それでも「『医師の診断』といえば,裁判官でも騙せる」と確信していた被控訴人は,「控訴人を,計測に応じさせれば,第2診断書で市・福祉課は騙せる。」と考えた。
 本来5級の患者に4級提示してやったのだから,「控訴人らは黙る」と思ったのだが,控訴人は,「5級じゃないか?」と疑問を呈した。
 そこで被控訴人は,控訴人に再計測に応じさせる方法を考えた,その結果が診断書修正協議中の保険給付妨害である。
 当然,控訴人は抗議するが,「訪問計測を提示して,応じなければ『保険をこのまま止めるぞ。』と脅迫すれば,違法に4級にしてやってるのだから,控訴人は応じ,体幹無しを認めさせられる。」と被控訴人は考えた。
 ところが,控訴人がこれを拒否した為,4級第2診断書を福祉課に提出すれば,もし気付く者がいて,患者に確認されれば、患者によって医療過誤や後述のおまかせリハまで露見してしまうかもしれない。
 そこで被控訴人は,第2診断書と共に,控訴人らを葬り去る事にしたのである。
 控訴人から「被控訴人には,空欄の記録がある。」と指摘されても,確認する意思は無く,以降,控訴人らに他病院を紹介せず,薬剤も止め,控訴人らを抹殺する事にしたのである。
 これを主導したのは,おそらく被控訴人事務長である。
 この分析は,被控訴人主張の調停経緯を検討しても明らかである。
 被控訴人は,「控訴人が再計測に応じると言ったが、体幹5級を引替えにするから,被控訴人要求に応じられなかった。」と主張し,原判決もこれを認定した。
 しかし,被控訴人は医師であるから,この時既に,下肢4級障害記載の診断書で身障者手帳を申請されれば違法である事を知っていた。
 また,今更体幹5級併記に応じても,下肢4級は認定されない。
 それなら,このまま,「控訴人が計測拒否したから,診断書作成交付が出来なかった事にした方がいい。」のである。
 原審裁判官は,被告主張のみを全面採用するから判断を誤ったのだが,身障者手帳を認定するのは行政であって,被控訴人ではない。
 被控訴人は,医師として,認定資料となる診断書を作成するだけである。
 確かに,違法と判っている第2診断書行使に,控訴人に抵抗があったのは事実だが,被控訴人に「医師として4級が正しい」という信念があったのなら、控訴人が計測に応じると言っているのだから,併合申請が認定さないと当然知っている医師として,まして5級は4級より下位だと知っていた医師だったのだから,認定は行政に任せれば良かったではないか。

 控訴人夫は,被控訴人窓口担当氏の「訪問計測提案」には独断回答を保留し,通話を終え,控訴人妻に確認したが,本人も「保険給付妨害を止めるまで,何をされるか判らないから」と訪問計測を拒否した。
 控訴人が「給付妨害停止要求」を続けると,作戦失敗の被控訴人は,控訴人らをクレーマー扱いしつつ,訪問計測再提案はせず,給付妨害を続けた。
 全労済の担当者らから転院を勧められた事もあり,被控訴人窓口担当氏に,保険給付診断の督促と紹介状交付を申し入れたが,その後も被控訴人の対応は無かった。

 保険給付妨害開始から1週間ほど経過しても,保険給付・紹介状交付が無いので,その督促と共に,医師法は罰則付きで,患者だけでなく「現にその看護に当つている者」に薬剤処方義務が定められ,また一般に家族が代わりに薬を受領するというのはよく聞く話であったので,被控訴人窓口担当氏に電話で「紹介状が間に合わないなら薬が切れるので,嫌がる妻の代わりに自分が受け取りに行く。」と話した。すると,被控訴人は「本人の診察が無ければ交付出来ない。」と答えたのである。

 原判決は,被控訴人の保険給付妨害継続中の状況を無視し,被控訴人の「訪問計測提案」を誠実対応の証明と認定した。
 しかし,直接的苦痛を与える薬剤処方妨害について,「家族には処方出来た」事実を平成23年10月から平成24年11月の原審まで隠蔽し,現在も後述の通り,実質薬剤処方拒否を継続しているのだから,被控訴人の「訪問計測提案」は,違法な第2診断書を控訴人に行使させる為の追加の脅迫行為と判断する他無い。

 被控訴人は,「本人診察が無ければ薬剤交付出来ない。」と控訴人に説明した事実は認め,「控訴人が薬局に交付しろと言って来た。」と控訴人批判主張を続けるが,「控訴人に,『家族に交付可能と伝えた。』」とは一度も主張していない。
 薬剤説明書(甲9)に記載されている通り,中心性頸髄損傷の薬剤は「医師の指示無く服用を中止してはならない。」もので,1日服用しなければ症状悪化が始まり,控訴人妻が苦しみ続けなければならなくなるのだから,家族が代わりに通院して交付されるなら,控訴人がこれに応じない筈はない。
 薬剤服用によって仕事が再開できれば,経済的・精神的にも安定したのだが,原判決は,薬剤無しの原因は控訴人にあったとだけ認定している。
 原判決は,代理通院処方の隠蔽を認定せず,それが保険金給付妨害継続中の追加嫌がらせであった事実を無視した。

 平成23年10月下旬のこの頃は,控訴人が被控訴人に電話をしても「『掛け直す』と切られる,不在になる,メールしても無視」が始まっており,被控訴人の謝罪は勿論,原判決が認定している再計測説得・紹介状要診察説明などが行われる状況ではなかった。

 当時の被控訴人対応実態の証明として,電話・メール無視のため控訴人が郵送した質問状(甲7)と,被控訴人「説明済み」回答(甲8)を原審に提出しているが,控訴人主張は全て否認された。
 被控訴人は,自ら控訴人らを感情的状況に追い込んでおきながら,控訴人が医師法を調べ始めるまでの1箇月程度の期間・数回だけの感情的薬剤要求メールなどを原審に証拠として提示し,控訴人らの不当要求を強調するが,被控訴人の誠実対応主張は弁論だけで,控訴人への対応証拠提示は無い。

 解決の十分な可能性があった第2診断書協議開始直後に,被控訴人は一方的に後遺障害12等級の保険金244万円の保険金給付妨害を始めたのだが,原判決は給付妨害を継続している被控訴人に診断書問題解決の意思があったと認定し,紹介状も薬剤処方も「被控訴人の説明を聞かなかった控訴人に非」がある旨認定した。

 しかし,控訴人は「被控訴人に診断書交付の意思が無く,解決の意思も無かった。」と考えるほか無い。

 既述の通り,控訴人に第2診断書を提示したが,直後に,「脊髄損傷は治癒せず,控訴人妻の障害が体幹障害であった事,下肢障害4級記載が誤りであった事に気付いた」と判断するのが妥当である。
 前述分析の通り、今更,体幹障害有りに変更すれば,控訴人から医療過誤を主張される可能性が有るし,第1診断書と違い,中心性頸髄損傷・脊髄損傷の記載がある第2診断書を,そのまま公務所に提出すれば,道庁の書類審査には医師が関与しているので,体幹障害に修正指導される可能性も出て来た。
 これを免れても,控訴人が虚偽診断書に気付けば告訴される可能性がある。

 他の病院に通院治療を再開させれば,体幹障害が診断されてしまうので転医させる事は出来ず,給付金妨害だけでは控訴人が折れて再計測に応じるかもしれないので,薬剤も止めたのである。
 控訴人は,原審でこれを類推させる主張はしたのだが,被控訴人から何の反論・理由説明も無いまま,控訴人らの妄想扱いである。

 既述の通り,薬剤処方について,被控訴人窓口担当氏は元看護師長であったのだから,家族への処方箋交付可能を知らない筈が無いのに,同氏が検討確認もせず「本人診察」だけを即答したのは,事前に拒否回答を予定していた可能性が高い。
 それが控訴人の誤解だったとしても,事実は家族に処方箋交付出来,通院中だった控訴人妻が薬剤無しでは苦しむ事を被被控訴人は判っていたのだから,「(保険給付妨害を継続しながら)何度も再計測を説得した,診察があれば紹介状交付すると伝えた。」と主張する「誠実な病院」であったのなら,後日でも家族・控訴人夫に処方箋交付可能を伝えれば,控訴人妻が現在も薬剤を切らしたままという事態は無かった。

 被控訴人は,そのまま控訴人らを葬れると考えていたのだが,控訴人らが民事調停を申し立てたので,次の手段として提携医師に工作し,「脊髄損傷は治癒しているが,坐骨神経痛を発症している。」と騙せれば,傷名を変えて体幹障害5級を申請出来,問題化を阻止出来ると考えた。
 その根拠は,提携医師の診察開始の第一声が「事故の怪我は治ってるね。年のせいで頚椎が傷んだだけ。歩けないのは坐骨神経痛。」であった事である。
 中心性頸髄損傷がMRIでしか診断出来ない事を知っている専門医が,レントゲン写真だけを診て「事故の怪我は治ってる」と,脊髄損傷治癒を診断する事は出来ない。
 これは,明らかに病院の診療情報提供書に,その旨の記載があったからと考えるほかない。当然,市・福祉課が「空欄があっても診断書受理する」と言っても,応じる気は無かったのである。
 また,控訴人らは治療再開・適法診断書交付を求めていたのは事実だが,何より現状控訴人妻の肉体的苦痛を和らげるのが第一目的であったので,それを被控訴人にも函館病院にも伝えていたのに,提携医師は,同病院から回復期患者の控訴人夫には薬剤処方しているにも関わらず,控訴人妻に対し「ここは急性期病院だから薬剤処方出来ない。控訴人が診察中断したから,診察中に約束した次病院への紹介状・診療情報提供書は(病院分を含め)送付しない。」と,薬剤処方を拒否した。
 提携医師の主張は誤りで,診察前に「診断発言」した「坐骨神経痛」を,診察終了後に「坐骨神経痛」診断確定しようとしたので,控訴人は診断のみを中断したのである。
 紹介状交付に診察を要すると言うのなら,診察終了後の診断内容疑義なのだから,医師には転医義務があった。
 相手を患者と侮って,MRIでしか診断出来ない脊髄損傷を,レントゲン写真だけで「事故の怪我は治ってる。脊髄損傷じゃなく坐骨神経痛など」と診断しようとするから,控訴人ら診断抗議中断すると,「MRIで再診察する。これを拒否するなら無診察だから紹介しない。」であった。
 提携医師の意図並びに病院の意図は明白であった。
 例えば,控訴人による病院対応非難を全て無視して来た被控訴人事務長が,「空欄第2診断書を交付するから,提携医師に相談してみたら?」と,非常に親切そうに提案して来た事である。
 控訴人が料金支払い済みの診断書を,控訴人には交付せず,提携病院診断書作成資料として提携医師に提供する旨,持ち掛けて来たのである。
 何の目的で,提供させようとしたのかは,明らかである。

 その後,被控訴人事務長に「薬剤処方不能事情」を伝えたが,事務長は理由を付け,他の回復期病院への紹介を拒否した。
 尚,この時も,「家族に薬剤処方出来る」という提案は無かった。
 この間の経緯は,原審で明らかにしているのだが,控訴人主張は全て認定されない。


本質的な争点「セラピストおまかせリハビリテーション
 平成24年5月提訴当時,控訴人は単に体幹障害に対する医師個人の,医療過誤とまでは言えない誤認識隠蔽のためと考えていたが,被控訴人らの嫌がらせは組織的で,控訴人らにとっては非常に深刻なものであった。
 何故ここまでするのか? 何があったというのか?
 それを調べるうちに,同年8月,被控訴人病院の「セラピストおまかせリハビリテーション」が判明した。

・被控訴人病院には厚労大臣の定める脳血管疾患等リハ専任医が在籍していない(被控訴人が認めている)ので,控訴人妻入院中,一度も脳血管疾患等リハ専任医の診察・治療指示・治療計画説明を受ける事が無かった。
・脳血管疾患等リハ専任医が在籍していれば,内科医の医師がリハビリ診察等を行っても問題は無いが,同医師にはリハビリ勤務実態がない。
・リハビリ科長並びに担当セラピストは,厚労大臣の定める脳血管疾患等専従セラピストではない(被控訴人が反論しない)ので,控訴人妻の中心性頸髄損傷を軽症と判断し,入院初日から病院全体が患者を軽症扱いし,適切な治療を行わなかった。
・脳血管疾患等リハ専任医が行うべき控訴人妻の中心性頸髄損傷の診断・治療計画策定を,リハビリ科長が実施していたため,第2診断書修正説明も医師不在で,リハビリ科長が行った。
 医師は,山梨病院からの医療情報は見たのだろうが,重症扱い記載の意味が解らず,山梨病院と同様扱いの指示はせず,入院初日からセラピストに任せてしまっていた。
・入院初日のカンファレンスで,リハ専任医の知識が無い医師は,控訴人らの治療期間上限を誤って2箇月短縮して説明し,特に6箇月上限の控訴人妻に対しては,診察・身体状況確認前に軽症・呼吸器リハ患者治療期間の3箇月退院を勧めた。
・医師は脳血管疾患等リハ専任医ではないので,控訴人妻の中心性頸髄損傷に関する薬剤の質問に「前病院の医師に聞いて」と,答えられなかった。
・医師は,控訴人妻が服用していた鎮痛剤を「骨折は治っているから,いらないんじゃないの?」と発言し,中心性頸髄損傷患者に頸部痛がある事を知らなかった。
・医師は,運動器リハ専任医(被控訴人が釈明しない)でありながら,入院中に控訴人らの受傷部分診察どころか見る事も一度も無かったのに,控訴人夫の「胸部変形は無い」と診断した。
・運動器リハ専任医でありながら,控訴人夫の胸部変形確認の申し出に,当初「自分は内科医だよ。整形の事は分からない。」と発言した。
・控訴人夫の変形確認後,「変形はあるけど,レントゲン診断は出来ないので,生まれつきのものか判らない。」と発言した。
・医師が病棟定例巡回の午前中,控訴人妻に「旦那さん,いつもいないけど何処行ってるの?」控訴人「リハビリ中です。」医師「あぁ,そう」・・・治療指示した筈の専任医が施療実態を全く認識していなかった。
厚労省指導は「医師は定期的な機能検査等をもとに,その効果判定を行い,リハビリテーション実施計画を作成する必要がある。」と定められているのに,医師は少なくとも定期的機能検査を記録していなかった。
・リハ専任医は,リハビリテーション実施計画を患者に説明し,その要点をカルテに記載する義務があるが,実施された事が無い。
・定期的機能検査記録が無く,効果判定が出来ないのに,医師は控訴人妻の退院を診断した。原判決は,記録が無いのは問題と述べながら,この定期機能検査記録の本件要再計測項目が効果判定の基礎となり,入院中の改善状況判定・退院時期判定の基礎となる点を無視した。
・医師が作成した控訴人妻の第1診断書は,不正確だっただけでなく,記載義務のある定期的機能検査記録3項目の記録が無いと主張していたのに,故意に正常値を虚偽記載し,控訴人妻に交付したのに,原判決は単なる過失と認定している。
・「第2診断書に記録無し項目がある」と被控訴人は再計測を主張するのだが,後遺障害診断書(甲3)の同記録のうち,一部は正しく症状通りの記載があったが,この矛盾について原判決は無視している。
・斎藤医師・副院長・リハ科長・セラピスト全てが,控訴人妻の中心性頸髄損傷が体幹障害に当たる事を知らずに治療し,体幹障害判明後の,現在もこれを否定し続けている。

 以上は,原審においても控訴人が何度も主張しているのだが,原判決の認定は「違法であっても本件関係無し」である。

 厚労大臣の定める基準に違反して,脳血管疾患等リハ専任医が在籍せずとも,リハ経験ある医師で問題無しと認定するのだが,医師は脳血管疾患等リハ専任医ではなかったと共に、運動器リハ専任医の勤務実態がなかったから,本事件が発生したのである。

 被控訴人病院の脳血管疾患等リハは,控訴人妻のほか,脳梗塞脳出血,脳外傷,脳炎,脳症,髄膜炎,脳膿瘍,脊髄損傷,脊髄腫瘍,てんかん重積発作,多発性神経炎,多発性硬化症,神経筋疾患,顔面神経麻痺等,パーキンソン病脊髄小脳変性症筋萎縮性側索硬化症,末梢神経障害,皮膚筋炎,多発性筋炎失語症,失認及び失行症,高次脳機能障害言語障害聴覚障害,言語聴覚障害,構音障害,言語障害を伴う発達障害等の患者を受け入れている。
 これらの患者に対して,脳血管疾患等リハ専任医の診察・治療指示・治療計画策定などが1度も行われていないのに,原判決は「違法治療であっても本件直結無し」と認定しているのである。
 しかし,高橋病院による医師法違反の「セラピストおまかせリハビリテーション」によって,多くの脳血管疾患患者が,知らずに控訴人妻と同様の診療を受けている事になる。

 被控訴人病院に入院していた控訴人ら2名が,2名ともこのような事態に巻き込まれたのである。単純なミスというより,構造的な欠陥があったとしか思えない。
 法律には無知な控訴人らであっても,被控訴人らにより,控訴人と同様多くの患者に不適切診療が行われていると知れば,その是正を求めるのが社会的責任だと考える。
 しかし,原審裁判官が,本事件の本質問題を正しく認識する事をしない上に,「被控訴人病院に何らかの法律違反の問題があるとしても」(16頁)と,多数の患者状況を見逃し,適法行為の控訴人に「本件とは直結しない」と,逆に控訴人らに非がある旨認定する。
 また,控訴人は,「医師は名目リハ専任医であって,勤務実態は無かった」旨,具体的事例を挙げて指摘しているが,原判決でこれが検証される事も無しに,適法診療と認定している。
 しかし,被控訴人病院の運動器リハは,控訴人らのほか,上・下肢の複合損傷,脊椎損傷による四肢麻痺体幹・上・下肢の外傷・骨折,切断・離断,運動器の悪性腫瘍,関節の変性疾患,関節の炎症性疾患,熱傷瘢痕による関節拘縮,運動器不安定症等の患者を受け入れている。
 これらの患者を担当する医師が,「整形の事もリハの事も判らない。」と発言していたと控訴人は主張しているのに,原判決は,被控訴人から反論もなくリハ専任医である証明も無いのに,被控訴人主張の「経験あるリハ専任医」とのみ認定する。
 しかし,控訴人主張が事実であったなら,脳血管疾患等患者より影響は低いだろうが,運動器患者にも不適切治療が行われている可能性がある。
 原審裁判官は,「問題があっても,本件直結は無し」と患者らを切り捨ててしまって,法律家・社会人として責任はないのだろうか。

 原審で控訴人らは,「被控訴人は,控訴人らを自殺に追い込む事を目的にしている。」旨主張しているが,許されない事とは言え,犯罪者が自己の犯罪を隠蔽するために,法律家に虚偽主張を繰り返すのは当然である。
 原審で控訴人らは,民事調停を不成立にして,控訴人らの被害を固定化した被控訴人弁護士を強く批判したが,原審においても控訴人らの被害は更に固定されたのである。

 控訴人らの客観的状況は,事故後の社会復帰を目指していた時に,入院していた病院の不法行為により,保険金給付は妨害され,他病院の治療再開は受けられず,薬剤処方は止められ,症状は完全に悪化し,控訴人らは仕事再開不能に追い込まれ,共に障害を負ったまま,もう2年以上無収入である。
 原判決は,この状態が「不当要求の控訴人ら,自らが招いたもの。」と判決し,債務不履行減額,慰謝料請求など歯牙にも掛けなかった。

 こうなった原因が,控訴人らの「違法行為は出来ません。」であったのだが,被控訴人の主張を正当だと認定するのなら,せめて原審において被控訴人主張通りに「下肢障害4級申請合法」判決をして頂きたかったものである。

 原審で,控訴人らは胸部変形・医療給付妨害など「新たな損害が判明した」点について,原審で変更申し立ては出来ないものと思い込んでいたのだが,それが可能だったと原審中に判明した。しかし,原判決では印紙の無駄だった。
 控訴審でも原審と同認定の可能性があるので,変更申し立ては出来ず,今「損害留保」の効力は不明だが,新たに別の損害が,提訴後の平成24年8月に判明した点だけ主張する。
 尚,原審では,胸部変形が賠償認定されているが,控訴人は胸部変形について原審では請求をしていない。
 控訴人らは,医療・法律・保険については全くの無知で,入院中は,それぞれの仕事に早期復帰すべく治療に専念していた。
 従って,胸部変形保険金額より,被控訴人の胸部変形給付妨害に対する憤りや,それ以上に体幹障害問題を重視していたので,賠償請求自体は正直忘れていた。
 原審中,胸部変形が後遺障害12等級に該当すると知って驚いたが,新たに判明した損害とはしたが,原審では賠償請求していないので,何故原判決で少額認定されたのかは不明である。

 原審で書記官から,(弁論主義なので)「主張に反論がなければ,主張が認定される。」と教えて頂いていたが,原審の認定方法は,「医療法人の主張は全て正しく,患者主張に法人が反論しないのは患者主張虚偽の証明,患者の反論に法人が反論無しで同じ主張を繰り返せば患者反論虚偽の証明」,その上,医療法人自ら,「診断書修正協議中に,別の患者の保険給付を保留させた。入院中の患者の障害は判っていたが,診断書に記載しなかった。」など患者有利の説明については,採用しない。


d 被控訴人主張の留意点
体幹障害に関する被控訴人主張の変化
 何故,控訴人5級主張が,被控訴人の4級主張より高い要求という,有り得ない誤認が起きたのかは,被控訴人の主張方にある。
 被控訴人準備書面1と同2,陳述書を比較すると,主張内容が明らかに変わっている項目が多数あるが,体幹障害に絞ると,

初,「上下肢障害7級(単なる自覚症状を好意的7級表記)・体幹障害無し・後遺障害無し」
1,「上肢障害7級・下肢障害4級・体幹障害無し・脊髄損傷治癒・後遺障害有り」
2,「上肢障害7級・下肢障害4級・体幹障害無し・脊髄損傷症状固定・後遺障害有り」
陳,「上肢障害7級・下肢障害4級・5級未満の体幹障害は有り・後遺障害有り」
 被控訴人は,控訴人妻の入院中,後遺障害はないものと診断認識し,大腿骨折リハのみ施療して来た。
 控訴人の指摘で下肢4級に訂正はしたが、控訴人から「脊髄損傷は体幹障害で,治癒例は無い。」と指摘されるまでは,「脊髄損傷治癒」を主張して来た。
 誤りに気付いた後は,「治癒という表現は治ったという事ではなく,症状固定の用語。」と説明したが,控訴人から「その医学用語は,寛解。治癒は治癒。」と指摘され,以後は説明無しに,5級までには至らない体幹障害は有ると陳述した。
 控訴人は,一貫して陳述まで「下肢4級は誤り,体幹5級が正しい」と主張して来たが,原判決は被控訴人の「陳述」を採用した。

e 保険給付妨害の開始時期
 第2診断書の診断協議中,控訴人が険悪ではなかった状況を説明するため,控訴人が「事を荒立てる気はない」と発言した事について,被控訴人は準備書面1で否認しなかった。
 その間の状況は既述済だが,被控訴人は準備書面1で「協議中に胸部変形回答を止めた」事実を認めていた。

 保険給付妨害が初期決裂原因であるのに,被控訴人が「準備書面1で真摯な反省と謝罪を述べ,陳述書で志田副院長が「原因はこちらに非があるので,他の関係者も含め本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。」「何度も何度も謝った。」とウソを述べたら,被控訴人の再計測提案が誠実と評価され保険給付妨害は消失,逆に妨害に憤慨した控訴人らに非があると認定される。


f 相互の費用負担メリット
 調停や訴訟には,費用が掛かる。
 費用を掛けたメリットは何かを検討すると,控訴人が第2診断書の下肢4級を,再計測を虚偽して,等級を下げるよう求めたのは,下肢4級届けが犯罪になるからである。
 一方,被控訴人は患者の身障者等級が何級に認定されようと全くメリットは無い。
 それなのに,不正診断書が判明した直後から,控訴人に一方的な嫌がらせを始め,弁護士を依頼しながら調停を決裂させたり,訴訟に応じた目的は何か。

 それは,控訴人妻の体幹障害と「おまかせリハ」の隠蔽である。
 ミスなら誰にでもある事だが,被控訴人には,それがおまかせリハという組織的な違法行為により発生した問題という自覚があったから,体幹障害を認め謝罪するより,まず控訴人らの抹殺を選んだのである。


g 平成24年11月原審中の被控訴人譲歩提案
 本来の争点とは無関係の問題であったので,控訴人らは原審においてこれを拒否した。