#21 地裁患者訴状2

転移義務に関する補足

保険医療機関及び保険医療養担当規則 (昭和32年4月30厚生省令第15号)
転医及び対診16 保険医は患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき又はその診療について疑義があるときは他の保険医療機関へ転医させ又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない

転医義務については、判例と共に、上記規則がある。



被告が頚髄損傷を頚椎捻挫と誤認していた事実に関する補足

被告が作成した障害者手帳用診断書(甲第1号証)は、「④参考となる現症」欄に「骨折部位(左大腿骨)を認めます。」とのみ記載され、より重症状である筈の中心性頚髄損傷の記載が無く、「参考意見」欄の「体幹等級」欄は無記入・・即ち体幹障害無しとの診断意見が記載されている。
次に被告が再作成した障害者手帳用診断書(甲第2号証)は、「⑤総合所見」欄に「脊髄の損傷による運動マヒと感覚マヒの残存。」と明記していながら、「参考意見」欄の「体幹等級」欄は甲第1号証と同様に無記入・・即ち体幹障害無しとの診断意見が記載されている。

被告病院は回復期病院であるため、専門医が直接治療を要する場合は急性期病院に転送するが、通常入院患者は非常勤専門医の診察を受け、被告病院内のリハビリ治療は被告内科医が関与せず、被告理学療法士が実施していた。
その理学療法士やリハビリ科長が、レントゲン写真を見て「もう治っている。手術するような怪我でなく良かった。体幹障害は無い。」などと発言しているので、被告内科医は入院記録の参照や専門医に確認する事無く、「頚椎捻挫に体幹障害は無い」と障害者手帳用診断意見したのである。

しかし、被告が再作成した障害者手帳用診断書(甲第2号証)に記載している「脊髄の損傷による運動マヒと感覚マヒの残存。」は、体幹5級以内の障害である。
この診断書を原告に提示し説明した被告リハビリ科長は、脊髄損傷を頚椎捻挫としか理解していないため、麻痺残存を単なる自覚症状と認識し、「体幹障害は無い。」と断言したのである。

医師法20条・無診察治療等の禁止に関する補足

本病院は内科医しか常勤していない病院であるが、提携病院などから定期的に整形外科医が出張診察を行ない、非常勤の整形外科医が建前上、療法士にリハビリ指示し、治療が行われている。
しかし治療実態は、専門医の診察前に療法士が傷病名だけを見て治療を開始しており、療法士が頚髄損傷に対し頚椎捻挫の治療を開始しても、これをチェックする体制がない。
 そして診断書・処方箋交付についても、提携整形外科医の診察・治療・診断に基いて作成するのが建前なのであるが、被告による交付実態は、一度も整形外科に関する診察をしない内科医が、患者退院時に整形外科医の診断やカルテ記録等を確認する事無く、療法士の意見を参考に習慣的に「治癒に近い状態」という症状実態を無視した診断書を安易に交付しているのである。

 医師法20条の「自ら診察しない」について、「医師は患部を一度も診察した事が無い内科医であったとしても、例えば血圧測定しただけでも『自ら診察』に該当し、専門知識のない整形外科の診断書を交付しても、『自ら診察しない』には該当しない。」という医師擁護の主張をする団体がある。
しかし、厚生労働省北海道厚生局北海道保健福祉部健康安全局が発行した平成23年度 医科集団指導用テキスト「保険診療の理解のために」は、

(3) 保険診療の禁止事項
無診察治療等の禁止(療担第12条)
医師が自ら診察を行わずに治療、投薬(処方せんの交付)、診断書の作成等を行うことは、保険診療の必要性について医師の判断が的確に行われているとはいえず、保険診療としては認められるものではない。
なお無診察治療については保険診療上不適切であるのみならず医師法違反(「医師は自ら診察しないで治療をしてはならない20に当たるものでありまた倫理的にも医療安全の観点からも極めて不適切な行為であることは言うまでもない
 と記載している。






参考規則
診療の一般的方針)第12条  保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。
療養及び指導の基本準則)第13条  保険医は、診療に当つては、懇切丁寧を旨とし、療養上必要な事項は理解し易いように指導しなければならない。
指導)第14条  保険医は、診療にあたつては常に医学の立場を堅持して、患者の心身の状態を観察し、心理的な効果をも挙げることができるよう適切な指導をしなければならない。
第15条  保険医は、患者に対し予防衛生及び環境衛生の思想のかん養に努め、適切な指導をしなければならない。


形式上、非常勤専門医の診察が行われていても、療法士に対する適正な治療指示が行われず、被告内科医が専門医の診断を確認せず診断書を作成交付している現状は、患者を一度も診察した事が無い被告による無診察治療等に該当し、テキスト「医師の判断が的確に行われているとはいえず保険診療としては認められるものではない」のであるが、この無診察治療によって、原告・F妻には頚髄損傷の適切な治療が行われず、入院期間3箇月を通じ誤った頚椎捻挫治療が行われたのである。

被告による無診察治療は療担第12適確な診断をもととし患者の健康の保持増進上妥当適切に行われる事療担第13診療に当つては懇切丁寧を旨とし療養上必要な事項は理解し易いように指導する事療担第14患者の心身の状態を観察し心理的な効果をも挙げることができるよう適切な指導をする事療担第1患者に対し予防衛生及び環境衛生の思想のかん養に努め適切な指導をする事は不可能であるから保険診療上明らかに不適切な行為である

 また、無診察診断書交付は、原告に多額の経済的損害を与えており、且つ刑法違反の虚偽診断書作成に当たる事となる。

被告の無診察治療・無診察診断書交付は、医師法違反(「医師は、自ら診察しないで治療をしてはならない」第20条)に当たり、倫理的・医療安全の観点からも極めて不適切な行為である。

原告・F夫の被告作成診断書に関する被害・補足

原告・F夫の大腿骨折について、保険会社用後遺障害診断書(甲第5号証)は「治癒に近い状態」の記載であるが、事実は松葉杖無しでは100m歩行困難の機能障害があり、疼痛の医学的証明は、レントゲンでプレート端の関節部分突出を確認出来、動作時の接触音と振動で確認されている。
この障害は、後遺障害基準で8級、障害者手帳基準で4級に相当するものであるが、被告は「ほぼ治癒」と診断したのである。

原告・F夫は、退院時歩行困難の下肢障害であってもプレート摘出により正常復帰すると考えていたが、被告が正しい後遺障害診断書を交付していれば、平成238月に胸部変形保険金が、平成241月下肢傷害確定時に後遺障害保険金が給付されていた筈である。

また原告・F夫は、下肢障害が残るとは考えていなかったので、被告に障害者手帳申請診断書の作成は依頼していないが、入院記録をそのまま転記すれば診断書作成可能であるとしても、原告・F妻の診断書作成方を思えば、被告による診断書記載内容は全く信頼出来ない。



原告らの薬剤処方に関する被害・補足

 原告・F夫は木工房を経営し、原告・F妻は工房制作の木工品と共に業者から仕入れた商品を販売する小売店を経営していた。

被告の紹介状交付拒否により、原告・F夫は5箇月間、原告・F妻は平成2310月から平成247月現在の8箇月以上も薬剤が処方されておらず、症状悪化による営業再開不能に加え、転倒し易くなり家事も出来なくなっている状況である。

原告らは、被告病院長期入院中に何のトラブルも無かったにも関わらず、退院後の通院治療中に交付された診断書の誤りを指摘しただけで、原告・F妻は被告から今現在も間接的傷害行為を受け続けている。

傷害)刑法第204  人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

思わぬ事故により身体障害者となった原告らが、被告による保険金給付妨害に加え、紹介状交付拒否により函館において他の病院での診察治療を妨害され、その結果として原告・F妻は現在も薬剤処方拒否により甚しい肉体的苦痛を与えられ、社会復帰である営業再開を妨害されている。

医療過誤の場合、一般的病院は治療事実の隠蔽を図るものであるが、被告は、今現在、そして今後も原告らの生活手段を奪う事により患者の抹殺、原告らの自殺を企図したものとしか判断出来ない。


診断書交付の費用請求に関する補足

原告らの医療保険診断書・後遺障害診断書については、昨年8月に被告作成診断書により民間保険会社の査定が終了している。
これを覆すには、被告がその非を認め、保険会社が承認するか否かは別にして、被告既成の診断書が虚偽記載であった事を認めて訂正診断書が作成されなければならないが、被告にその意思は無い。

本項で原告らが費用請求する診断書は、自動車保険が定める最終後遺障害診断書と障害者手帳申請用診断書である。
これらは、被告が原告らの入院記録を正しく転記すれば何の問題もないのであるが、被告にその意思は無く、被告が唯一紹介した提携病院医師も、被告の誤った診断を正当化する以外の診断を拒否している。

原告・F妻を診察した提携病院医師は、「事故の怪我は治っている。現在の障害は坐骨神経痛等に起因。中枢神経系薬剤は不要。」と診断しようとし、これに対し原告が「脊髄損傷を治癒したと診断する医師は信頼出来ない。」と診察継続を拒否したため、保険会社への報告は「中心性頚髄損傷の疑い」記載に留められた。
もし、原告の傷病が「坐骨神経痛等」と診断報告されていれば、治療費は自己負担となり、同じく脊髄損傷治癒診断した被告病院治療費も負担しなければならないところであった。
MRIにより脊髄損傷が診断確定している原告の場合、治癒例は世界的に存在しないとしても、医師が治癒診断してしまえば、これを覆すのは裁判しか方法が無い。
提携病院に、「脊髄損傷治癒例はあるのか? 山梨病院のMRI診断は誤診と主張するのか? 薬剤処方拒否・紹介状交付拒否は病院方針か?」など質問したが、「正確な情報を伝えられないので紹介状は書けない。」以外は答える事が出来なかった。

原告・F夫は、プレート摘出は不可能になったが、関節に接触するネジは、函館病院で摘出手術の予定であった。
しかし、函館病院医師は、被告交付の「ほぼ治癒」診断書に合わせて、事実として疼痛による歩行困難がある事は認め、且つ厚労省の疼痛機能障害基準を知りながら、「後遺障害は認めない。」と明言した。
そこで、信頼出来ない函館病院による手術は危険と判断し、山梨における手術後に、原告らの診断書作成を依頼する事とした。

薬剤処方の費用請求に関する補足

原告・F妻について、被告が紹介状を交付しないので、函館では今後も薬剤が処方されず、症状悪化のまま社会復帰は不可能である。
また、函館病院医師は、診察中に原告の質問に答え、「中枢神経系の症状ではないので、薬剤は変わる。」と発言した。
脊髄損傷の患者に坐骨神経痛の薬を処方しても、症状は改善しないのが明らかであっても、脊髄損傷治癒診断正当化のために薬も変えてしまうというのだから、患者の事を全く考えない医師である。

被告の紹介により他の病院に通院出来たとしても、診断だけでなく薬剤処方も全く信頼出来ず、誤った診断や薬剤処方が行われれば、被告・提携病院と同様の対応をしなければならない事になる。


薬剤処方費用請求については、原告・F妻は単独行動が出来ず、原告・F夫も手術病院で薬剤処方を受ける事になるので、本請求は2名分の費用請求となる。