#17 高裁判決に関する判例違反と法令違反

第2項 判例が無い事の意味
 脊髄損傷に関連する判例は,MRIによる画像診断が行われていない若しくはMRIの診断画像に異常が認められない場合に,患者が低度の後遺障害について,加害者や保険会社と争った事件が大半である。


 MRIの診断画像に異常が認められた場合は,中度の後遺障害が確定しており,脊髄損傷の有無について争われた判例は存在しない。
 受傷後数年を経てからMRI診断により脊髄損傷が発見された判例MRIの診断画像に異常が認められず脊髄損傷が診断されなかったが,再診断で異常が発見された判例などがあるが,これらは後遺障害の有無について争われたものではなく,その後遺障害の原因が事故によるものか否かが争われただけである。



脊髄損傷の有無を争った事案(等級は体幹障害等級では無く後遺障害等級)


富山地裁平成22年7月15日判決
損保料率機構認定の自賠責5級2号が,MRI画像に異常が無いため12級に。


平成19年2月28日判決
中心性頚髄損傷と診断されたが,MRI等の画像で異常がみられないので,脊髄損傷を否定。


平成18年7月18日判決判決
自賠責では頚髄損傷が否定され14級だが,MRIで異常がみられないので自賠責通り14級。


大阪地裁 平成18年4月26日判決
現在のMRI診断で確定的に認識できる異常は見られないが,8年前の受傷直後のMRI診断では高輝度像の異常が見られるので,脊髄損傷を認定。
東京地裁 平成17年1月17日判決
MRI診断画像により,第3-4頸椎間で脊髄損傷を認定。


平成16年6月16日判決
MRI診断画像所見等が無かったので頚髄損傷を否定したが、症状と事故との因果関係は認めた。


東京地裁 平成15年5月8日判決
MRI診断画像等他覚的所見によって変性によらない頚髄の不全損傷を認定。


名古屋地裁岡崎支部 平成16年5月7日判決
MRI診断画像から脊髄空洞所の所見を認定。


平成14年1月17日判決
自賠責は非該当だったが,MRIに異常がないことから頚髄損傷は否定。しかし,何らかの異常は認めた。


東京地裁 平成12年5月16日判決
 頸髄損傷の内,不全損傷についてMRIは有力な診断方法であるが,画像上所見が出ない場合もあり得る。


大阪地裁 平成14年7月30日判決
MRIに異常が無いので後遺障害の程度は後遺障害等級九級よりも軽度であるが,11級程度の障害を認定。


平成12年1月19日判決
事故後3ヶ月経過頃から障害発生。MRI異常があったので因果関係を認定。


神戸地裁 平成11年1月11日判決
 後日のMRI画像診断による低信号域が,頸髄出血の痕跡が繊維化したものと認定。


平成7年3月30日判決
MRI無しでも,症状や経過を総合的に考慮して,中心性頸髄損傷に近い頸髄不全損傷との診断が妥当。


大阪地裁 平成7年3月2日判決
両下肢麻痺の原因として胸髄11髄節の知覚障害が認められ,MRIで裏付けられた



 上告受理申立人の脊髄損傷については,受傷直後にMRI診断で画像に異常が見られ,医師が患者の筋萎縮状態などを診察した上で診断された脊髄損傷である。
 従って,上告受理申立人の脊髄損傷の診断は確定している。
 これについて相手方は同意しており,「脊髄損傷を認知了解し,正しくリハビリ治療を行っていたので,FIM満点近く・診断書記載不要まで症状改善させた。」旨主張した。
 
 これに対し,上告受理申立人は「上告受理申立人のMRI診断された中心性頸髄損傷は,後遺障害等級9級以内・体幹障害5級(第2診断書総合所見に高度の体幹3級該当記載が無いため)が確定する後遺障害であって,不治の脊髄損傷をリハビリ治療で治癒させる事は出来ない。」と,何度も何度も主張したが,原判決は相手方主張通り「リハビリ治療で脊髄損傷を治癒させた」旨認定した。
 本事案の争点は,MRI診断された脊髄損傷が,「リハビリ治療により診断書記載に到らないまで治癒させた」と主張する相手方の診断が正しいか否かである。
 現代医療において,脊髄損傷不治は医学常識なので,医師がMRIで診断された脊髄損傷について,リハビリ治療で治癒診断する事は無く,患者・医師・保険会社・加害者間で争われた判例は1件も存在しない。
 また,保険会社・損害保険料率算出機構も,脊髄損傷の場合,後遺障害症状固定を前提に給付認定を行っており,リハビリによる治癒可能性を争ったり,将来の治癒可能性の有無について争った判例は,当然に無い。
 6箇月間の保険診療期間が認められている脊髄損傷患者に対し,「3箇月間のリハビリ治療で治癒させた。」とする相手方主張が事実であったなら,脊髄損傷の有無を争う多数の判例が存在する筈であるが,そのような事実は無い。


 「脊髄損傷を治したという医者はおかしい。転医した方が良い」と勧めた保険会社に,「高裁でもリハビリで脊髄損傷を治したという判決が出た。」と報告したが,「そんな話聞いた事がありません。」と言っていたレベルの話である。


 脊髄損傷不治は,あまりに常識的なので治癒判例が無いのだが,原判決の「第2診断書(体幹障害無し・上肢障害7級・下肢障害4級)の判断が誤りと認めるに足りる証拠はない」(高裁3頁)認定が破棄されなければ,MRI診断済みの脊髄損傷が,リハビリ治療によって体幹障害無しまで治癒し,代わりに完治している下肢に中度の障害が残る。」という高裁判決が判例になってしまう事になる。
 この結果,MRI診断の有無に関わらず脊髄損傷が治癒する判例があるのであれば,脊髄損傷に関わる全ての判決について,時効分を除き再審請求が可能であるし,現在,そして将来の脊髄損傷患者に対する後遺障害保障・補償拒否裁判が多発する事になる。


 上告受理申立人の脊髄損傷については,手術を行った山梨県立中央病院においてMRIにより中心性頸髄損傷(脊髄損傷)と診断され,急性期のリハビリ治療を行った山梨リハビリテーション病院において「大腿骨折は早く治るが,体幹障害は残る」旨の診断説明を受けていた。
 その後,相手方病院で回復期リハビリ治療を受け,退院時に同病院相談員から「大腿骨折は申請出来ないが,頸部は申請出来る」旨説明されたので,身障者診断書交付を依頼したのである。


 その結果が,相手方の第2診断書の正しい総合所見であり,この所見に障害認定基準を参照すれば,第2診断書の意見書は「体幹5級」該当意見判断となるべきものである。


 しかし,相手方は誤った第2診断書・意見書の「体幹なし」記載のみを根拠に,「脊髄損傷を治癒させた」と主張しているのである。
 治る筈の大腿骨折に中度の障害を残し、不治の脊髄損傷を治癒させたという一般内科医のリハビリ治療によって,世界初の脊髄損傷治癒症例を発現させる奇跡が起きる可能性は全く無い。



第3項 通達軽視による刑法解釈の誤り
 地裁において,書記官から「身体障害認定基準は通達で,法律じゃないから」という話があった。
 また高裁も「関係証拠(甲12・身体障害認定基準)を提出するが,被控訴人が第2診断書でした判断が誤りであると認めるに足りる証拠がないのは前記引用に係る原判決のとおりである。」(高裁3頁)旨認定し,地裁と同様に,身障者診断書作成時のリハビリ医の判断根拠となる身体障害認定基準を,証拠として認めなかった。


 身体障害認定基準は,身体障害者福祉法に基づいて定められた身体障害者福祉法別表並びに身体障害者障害程度等級表を補完するべく、厚労省が具体的認定方を定め地方行政機関に通達したものである。
 確かに行政間の通達であって,地方機関に対し,身障者から医師による診断書を添付して申請があった際の認定基準とするよう通達したものに過ぎない。
 しかし,身体障害者福祉法別表等に基づく申請があった際,行政側の具体的認定基準を定めたもので,この認定基準に適合しない事を知りながら,医師が虚偽診断書を作成したり,患者が障害を装って作成させた虚偽診断書を行使した場合,それが身体障害者福祉法別表等に反しているのであれば,刑法第160条の虚偽診断書作成罪であり,同診断書を行使した者,そして行使未遂も処罰対象である。


 これについて上告受理申立人は,地裁段階から平成19年12月の北海道滝川の聴覚障害者手帳不正受給事件を挙げているが,同事件は身体障害認定基準に反し,身体障害者福祉法別表等に違反する診断書作成行使が犯罪とされ,医師らが虚偽診断書行使と詐欺で有罪になっているのである。


 第2診断書は,総合所見において体幹障害の診断を記載し,上下肢の単独障害の記載は無い。
 然るに,第2診断書の障害等級申請意見では,根拠も示さずに身体障害認定基準・身体障害者福祉法別表等に違反する「体幹なし・上肢7級・下肢4級意見」が記載されている。
 身体障害認定基準は,体幹障害には4級が無く,3級への繰り上げは認定しないと定めているので,第2診断書意見書は「体幹障害5級」意見判断が正しい記載となる。
 第2診断書の意見書が不法に高い4等級を申請するものであったので,上告受理申立人は第2診断書の総合所見通り,体幹5級に訂正するよう求めてきたのである。


 地裁は「より高い等級の3級記載を求めた上告受理申立人らが悪い」旨判決したので,高裁において「上告受理申立人らは,一貫して(第2診断書総合所見通り)体幹5級を求めて来た」旨主張したが,原判決は「上告受理申立人らが相手方に高い等級の虚偽診断書作成を求め,刑法違反の虚偽診断書行使を謀った」旨認定に変更がなかった。


 このような事実に反する認定が行われたのは,第2診断書総合所見の評価・虚偽診断書解釈の誤りに基づくものである。


 上告受理申立人F妻の後遺障害対象が,体幹・下肢どちらの障害に該当したとしても,中度の障害がある事については,上告受理申立人・相手方双方に争いが無い。
 それでは,その障害対象・等級について,リハビリ医が具体的に判断する根拠は何かといえば,基本的には身体障害者福祉法別表等の基準に基づくが,身体障害認定基準は行政側の具体的な認定方を定めているので,リハビリ医は実務上これを参照して診断書に意見を記載しているのである。
 尚,FIM数値の運動機能判定対象項目は,身体障害認定基準には全く関係が無いのに,原判決が障害認定の根拠になるかのような相手方主張を認定したのは誤りである。


 身体障害認定基準では,体幹・下肢どちらも自立歩行距離が等級判断基準の一つとされており,自立歩行基準に従い4級相当の中度障害がある事については,上述の通り当事者間に争いが無い。
 そして,身体障害認定基準は,脊髄損傷の該当障害を体幹障害と定め,第2診断書の障害起因部位・脊髄記載,並びに総合所見の体幹障害記載から,第2診断書の障害対象意見書は体幹5級相当意見が記載されなければならなかったものである。


 相手方は「5級に達しないレベルの体幹と下肢を併合申請して下肢4級意見を記載した」と陳述したが,地裁判決はこれを拡大解釈して「上告受理申立人らは下肢に加えて体幹を要求し,より高い等級を求めた」旨認定した。
 しかし,身体障害認定基準に従えば、大腿骨折は下肢障害の認定対象では無く,下肢に単独障害が無い場合,体幹と下肢を併合申請して上位に認定する事は認めていない。
 上告受理申立人らは,高裁において「第2診断書の総合所見に従えば,下肢に単独障害が無いのに下肢4級を申請する事は不法な虚偽診断書作成に当たるので,低い等級の体幹5級を一貫して主張してきた・・・虚偽診断書行使未遂犯では無い。」旨主張したが,高裁判決もこれを認めなかった。


 相手方が、体幹下肢の併合申請という,明らかに身体障害認定基準に反する主張をしているのに,これを指摘した上告受理申立人らを,そして第2診断書総合所見通り体幹5級が正しく,相手方主張の下肢4級は不法に高い等級になると主張し続けた上告受理申立人らを「虚偽診断書行使未遂の犯罪者」と認定したのである。



第4項 法令解釈の誤り


原判決による身体障害者手帳申請妨害の継続
 原判決は,「第2診断書空欄再計測に応じなかった上告受理申立人に非がある」旨認定し,相手方による身体障害者手帳申請妨害の継続を容認した。
 しかし,第2診断書の空欄計測対象はリハビリ部位であり,治療効果判定や治療計画策定の根拠となるもので,罰則付き医師法第24条の診療録記載義務がある。
 然るに原判決は「計測値が無いのは問題ではあるが」と言及しながら,医師法違反行為を全く問題視していない。


 診療録記載義務違反を行ったと相手方が認め,患者に義務の無い再計測を強要しているのに,「これに応じなかった上告受理申立人に非がある」と判決は認定したが,医師法は何のために罰則まで定めているのであろうか。
 また,上告受理申立人が「計測値が無いのは虚偽で,後遺障害保険診断書(甲3)に無い筈の計測値記載がある」と指摘し,相手方も第2診断書では空欄の計測値が後遺障害保険診断書には記載されている事実を認めている(地裁被告準備書面1)にも関わらず,無用の再計測に応じなかった上告受理申立人に非がある旨認定したのは,事実誤認があるのではないだろうか。


 計測値が相手方病院にあるのだから,相手方はいつでも第2診断書の空欄を記載し交付する事が出来た。
 しかし,第2診断書の総合所見と意見書に矛楯があり,既に相手方は「脊髄損傷は治癒せず体幹障害が残る」という医学常識に気付いている以上,虚偽第2診断書を作成すれば不法行為になる事も理解している。
 従って,相手方は,誤治療・誤診断の証拠になる第2診断書を交付する意思は,今後も無いのである。


 上告受理申立人には,障害部位は別にして4級相当の後遺障害がある事を相手方は知りながら,身体障害者福祉法の理念に反して,上告受理申立人の自立や社会復帰を約2年間妨害し続けているにも関わらず,原判決は相手方の診療録記載義務違反行為を容認し,上告受理申立人らが死ぬまで身体障害者手帳を申請出来ない現状を維持させたのである。


 上告受理申立人F夫の右膝関節障害についても,相手方の提携医が「再手術不能
現状疼痛による歩行障害があるのを認め,身体障害認定基準の疼痛障害認定基準に該当するが,身障者診断書は書かない。」と明言しているので,身障診断書交付を依頼出来る病院が無い。



原判決によるアメリカンホーム保険会社・後遺障害保険給付妨害の達成
 原判決は,相手方が交付した上告受理申立人らのアメリカンホーム後遺障害保険診断書の誤りを一部認定した。
 しかし,相手方は,第2診断書の誤りを隠蔽する目的で,平成23年10月保険金給付妨害を開始し,上告受理申立人らの抗議を無視し続け,上告受理申立人らが申し立てた「給付妨害停止」調停を,平成24年3月に拒否したのである。
 そして提訴後,相手方は平成24年10月に「給付妨害では無く,患者の利益を考え一気解決のため保留しただけ。平成24年3月保険会社に診断訂正を申し入れたが,上告受理申立人らが訂正を拒絶したから給付されていないだけ。」と主張した。
 これに対し上告受理申立人らは,「調停で給付妨害停止を申し立てているのに,拒絶する理由が無い」旨反論している。


 この時点で,相手方に給付妨害の意思がなければ,診断書訂正が行われて然るべきであり,その場合当然に上告受理申立人らに給付金全額が給付されていた筈である。


 平成24年12月地裁陳述書で相手方は「上告受理申立人の胸部変形・右膝関節障害,同妻の障害を一気解決するため保険診断書訂正を保留した」旨主張した。
 しかし,原判決が損害の一部について極少額しか認定しなかったため,控訴されたと知った時,上告受理申立人の胸部変形についてのみ保険会社に訂正を申し入れただけである。
 保険会社では,受傷後2年間の給付対象期間を終了しており,保険金給付が行われる事は無かった。


 何故,相手方が上告受理申立人らの保険診断書交付に応じなかったかと言えば,第1診断書(甲1)と同時期に作成交付した軽症記載であったからである。
 相手方は第1診断書の誤りを認め,上告受理申立人に第2診断書を訂正提示したが,記載内容の矛楯を上告受理申立人に指摘され,釈明が出来ず第2診断書の交付を中止した。
 第2診断書に脊髄損傷の総合所見を記載しながら,第2診断書「上肢7級・下肢4級・体幹なし」意見書記載では,そのまま福祉課が障害認定する筈が無いからである。


 そして,同旨内容で後遺障害保険診断書を交付しても保険会社の査定で問題になり, また福祉課が特例で空欄のままの第2診断書を受理すると承諾してくれているのに,これを相手方が拒否したのも,医療過誤が判明してしまう事になるからである。
 
 罰則付き医師法20条は無診察診断書交付を禁じており,同19条2項は診断書交付義務を定めている。
 まず無診察の定義について,判例などから問診や入院患者回診も診察に含まれるという主張があるが,本件診断書は後遺障害診断書なのであるから,後遺障害程度を診察して交付しなければならないものである。
 相手方の場合,医師法に反し上告受理申立人らの患部を一度も診察した事が無かったため,上告受理申立人の,見ただけでも解る胸部変形や右膝関節障害を,診断書に記載しなかった。
 また,上告受理申立人妻については,MRIで診断されている脊髄損傷患者を全く診察していなかったので,軽症の頸椎捻挫症状を記載したのである。
 相手方は「自分は内科医だから診察出来ない。」と拒否したリハビリ医?である。


 相手方の行為は,医師法違反の無診察治療・無診察診断書交付であり,上告受理申立人らの後遺障害保険診断書訂正を約束したにも関わらず,第2診断書隠蔽のため正当な理由も無く診断書交付義務に違反して診断書訂正を拒否し続けたのである。


 原判決は,この医師法違反を無視し「診断書の記載・不記載が誤りと認めるに足りる証拠は無い」旨認定した。



原判決による全労済自賠責後遺障害給付妨害の継続
 全労済自賠責後遺障害保険給付は,本来,相手方が診断書を直接全労済に送付し,平成23年中に給付が完了していた筈であった。
 しかし,相手方が誤った診断書の訂正に応じない以上,上告受理申立人らは全労済に保険給付を申請する事が出来ない。


 これは前述、アメリカンホーム保険会社・後遺障害保険給付妨害と同様の医師法違反に基づくものであり,原判決がこの不法行為を容認し,体幹障害治癒を認定しているので,相手方は「体幹障害」を診断書に記載する義務は無い。
 しかし,「下肢4級」を記載しては,給付査定外であり医療過誤が判明するため,今後も全労済自賠責保険給付妨害を継続するのである。


 後遺障害保険診断書や自賠責後遺障害診断書は,実務上,後遺障害等級表基準・労災障害認定基準を参照して,医師により作成される。
 自賠責保険会社はこれを損害保険料率算出機構に送付し,機構は後遺障害の認定を行い損害算定結果を自賠責保険会社に通知,自賠責保険会社はその通知に従い自賠責保険給付を行うので,損害保険料率算出機構の認定方は統一的かつ専門的である。


 そこで,上告受理申立人妻の場合は,後遺障害保険診断書・自賠責後遺障害診断書の記載内容を,第2診断書の総合所見に準拠して交付すれば,正しい診断書となる。
 しかし,相手方が主張する「体幹障害治癒・上肢障害7級・下肢障害4級意見」に準拠して交付すれば,保険会社や損害保険料率算出機構から,必ず誤りを指摘される事になる。


 原判決が維持される限り,今後も妨害が継続され,全労済自賠責後遺障害保険給付保険給付も失効する。
 


 民間保険契約制度は,患者・医師・保険会社の法に基づく信頼関係の上に成立している。
 しかし,医師法に反する原判決が確定すれば,「診断書記載・不記載は,医師の恣意的判断・裁量により決定出来,それが保険金給付査定に影響する誤記載であっても,誤記載を医師が認めなければ『誤りであると認めるに足りる証拠は無く』,医師が誤りを認めた場合は契約所定金額の5%以下を医師が賠償すれば足りる」事になる。
 そして,そのような被害は,患者・保険会社,どちらにも生じる可能性がある。



原判決による治療再開妨害の継続
 原判決は,「相手方に転医義務は無い」旨認定した。
 しかし,保険医療機関及び保険医療養担当規則16条は,自己の専門外・診療に疑義がある場合の転医義務を定めており,「脊髄損傷をリハビリで治癒させた」と今も主張する医師,自ら記載した第2診断書の誤りを患者に指摘されるまで気付かない医師のリハビリは,誤治療であった蓋然性が非常に高い。
 一定の知識がある複数の保険会社担当者が,「脊髄損傷を治したという医師はおかしい。他病院で治療を再開した方が良い。」と勧めているのに,裁判官が根拠も無しに患者の治療再開を妨害するのは,明白な人権侵害である。


 相手方は,誤治療隠蔽のため上告受理申立人の転医を妨害し続けているのに,この不法行為を容認する原判決の結果,上告受理申立人らは治療再開が不可能のままである。


 上告受理申立人らのリハビリ治療期間について,リハビリ医療の知識が無い相手方は誤って所定期間より2箇月短縮して治療終了した。
 しかし,他部位損傷の上告受理申立人らは上限適用除外に該当し,更に2箇月以上の保険診療延長が可能であった。
 この事実が判明したのは提訴後の平成23年8月(地裁原告準備書面記載)であったが,相手方が現在も「FIM満点近くまで症状改善させた」と主張している以上,治療再開に応じる筈が無い。
 相手方により誤治療が行われていた上に,治療再開が妨害されたのであるが,更に保険各社から治療費給付とは別に医療保険給付として,上告受理申立人らに1箇月約200万円の医療給付が支払われ,特に脊髄損傷患者は退院後も3~4箇月通院治療が行われるのが通例であり,その間の通院給付も支給された筈であった。
 万が一の時のために30年以上掛けて来た保障給付が,相手方の医療過誤隠蔽のために妨害されているのに,判決はこの不法行為を支持したのである。



原判決による不正な診療情報提供の継続
 平成24年3月,唯一相手方が調停拒否後に転医紹介した提携病院医師は,相手方の第2診断書の意見書に合わせて,MRI診察前に「脊髄損傷は治癒している」旨診断しようとした。
 専門医でありながら,MRI診断された脊髄損傷を,レントゲンだけで治癒診断する事は有り得ず,相手方の診療情報提供書が,正しい第2診断書の総合所見では無く,不正な第2診断書の意見に合わせて改変された診療情報提供書であった事を意味する。


 以後、相手方は転医を拒否し続けたが,「事故患者の場合,紹介状提示が必須」と定めている函館医師会以外の病院で,上告受理申立人が受診出来たとしても,診療情報提供書は相手方から取り寄せられる事になる。


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